地道に症例報告を記す〜CAREというガイドラインは有用か
論文執筆のためのガイドライン
The EQUATOR Network | Enhancing the QUAlity and Transparency Of Health Researchには、数々の論文執筆のためのガイドラインが載せられている。
CARE
ご多分に漏れず、症例報告にもCARE というガイドラインがある。
内容を見てもらうとわかるが、checklistとなっている。 13の項目(他にも小項目あり)について、論文に含む内容は広く網羅されたものとなっている。
実用的なのか?
このガイドラインは、full lengthの症例報告の執筆には有効だと考える。 事項は十分に網羅されている。初学者が症例報告の書き方を学ぶのにも素晴らしい。 しかし、このガイドラインには、最大の問題点がある。
それは、「有名雑誌ではfull lengthの症例報告を取っていない事が多い」ことだ。
full lengthの症例報告誌はインパクトファクター(IF)が1を下回るものも多く、あまり目に触れない。
現在、有名雑誌では、症例報告の掲載枠は大きくは取られておらず、Letter形式でのみ掲載が許される雑誌も多い。
例えば、NEJMのimageコーナーなどは、150 wordsと紙面は限られるが物凄いインパクトだ。
このほかも、250-1000 words以内のものが主流といえる。
つまり、IFの高い雑誌に載せるには、チェックリストを逐一載せていては、あまりに情報量が膨大過ぎるのだ。
実例
以前、IF18のGastroenterology誌に症例報告を載せたことがあった。これは、Quiz形式だ。
Multiple White Plaques in the Body of the Stomach in a Patient Undergoing Hemodialysis
また、以前ブログにも書いたが、Letter形式でも、内容が重要であれば、メディアに取り上げられるのだ。この雑誌はIF3.8(老年医学で2番)であった。
IFが高い雑誌のほうが、読まれやすい傾向にあるため、社会に与える影響も大きいと考えられる。臨床医にとってもモチベーションに繋がるものだと思う。
まとめ
これらの事実を考慮すると、CAREがフルで使用できる状況は限定的かも知れない。
それでも、ガイドラインの事項をすべて網羅できることを確認した上で、短い原稿にも濃縮できることが、質の高い症例報告執筆への道だろう。
References
- The EQUATOR Network
http://www.equator-network.org - CARE
http://www.care-statement.org - Multiple White Plaques in the Body of the Stomach in a Patient Undergoing Hemodialysis
http://dx.doi.org/10.1053/j.gastro.2016.03.049