UGT1A1*28*28と肺癌リスクについて
UGT1A1*28*28と肺癌リスクについての解説記事
最新の研究で、UGT1A1*28*28と肺癌の罹患との関係が明らかになりました。この研究は2016年11月10日のInternational Journal of Clinical Oncology誌(オンライン版)に掲載されました。本稿は、今年読んだ一番好きな論文2016とリンクしています。
UGT1A1とは
UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)は主に肝臓の小胞体に局在し、UDP- グルクロン酸をドナー基質とし排泄作用の一環として細胞内の水酸基やカルボキシル基, アミノ基,イミノ基,スルフィドリル基を持つ化合物をグルクロニル化する酵素です。簡単に言うと、肝臓で毒素を代謝する酵素です。
UGT1A1の遺伝子多型は、アジア人よりも白人に多い*28と、ほとんどアジア人にしかみられない*6などが存在します。
論文の紹介
本研究では、単一施設で2004~2014年に化学療法を受けた5285例のうちUGT1A1の遺伝子型が測定された765例を研究対象としました。肺癌とその他の癌の群に分け、UGT1A1*6及び*28の頻度の差を検証しました。劣性・優性・相加のそれぞれのモデルで、ロジスティック回帰を行い検証しました。統計ソフトはRを用いています。
(Nishikawa 2016より一部改変)
UGT1A1*28*28 の頻度(UGT1A1*28劣性モデル)は、肺癌においてその他の癌と比較して高いことがわかりました( オッズ比OR = 5.3, p = 0.0083)。その他の遺伝子多型では、肺癌とその他の癌とで差を認めませんでした。
(Nishikawa 2016より一部改変)
- UGT1A1は煙草に含まれる有害物質の代謝に影響することから、肺癌のリスクを上げたのではないかと推察されること。
- Genome wide association studyなどにおいても、*28という「リピート変異」は、余り検証されてこなかったこと。
- 専門分化していく中で、統合して臓器横断的に見ることで、新たな関連を見いだせたこと。
は重要なポイントであると考えられます。
本研究は、単一施設での、癌患者が対象の研究ですが、今後の議論のたたき台になることを願っております。
そのほか、論文中では、病理組織の結果も含めて検討しております。もしよろしければ、ご一読ください。
出典:Association between UGT1A1*28*28 genotype and lung cancer in the Japanese population | SpringerLink